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#60 四体のディルガインゴーレム



 さて、一方、レルリラ姫は。
 レルリラ姫は、ディンキャッスル城門前で聖騎士達とともに芋獅子副将ジャガポを撃破し、ぴちくりぴーと共に跳ね橋を渡って城門より内側に入っていた。

 城門の中の広い庭の左右に四階建ての建物があり、左に兵舎兼櫓、右に領主特務塔がそびえている。

 広場では、
 ガンマとリヴィヴェエリスが、
 アルシャーナとムワピゥュィが、
 虹蛇(ウァナンビ)つきヌヌセちゃんとアトマック達のアトマシーンが、
 それぞれ戦っている。

「レル、来たか!」
「レル、ヌヌセちゃんの加勢をたのむわ!」
 アルシャーナとガンマが、それぞれの相手と戦いながら声をかけた。

「はい! ヌヌセちゃん、お手伝いいたしますわ!」

「いえ、この相手は、わらひと虹蛇(ウァナンビ)ユールルだけでがんばりますのれす。姫様は特務塔の入り口のやつらをやっつけてくらはい! 数が多くって手が回りませんれす!」

 そう総大司教ヌヌセちゃんに言われて、レルリラ姫が領主特務塔の入り口をみると、巨体が四体並んで雑談をしている。
 今は封印されしディルガインを模して開発された四体のディルガインゴーレム。ディルガイン付人四人衆の駆る「ディルレム」の、ディルレムチームであった。

「わかりました、ではわたくしの担当は…あちらの手すきの方々にいたします!」

 レルリラ姫は、仲間たちの戦う戦陣の端をぐるりと回るようにして、領主特務塔に走った。

 ずざぁ、と、走りきるとレルリラ姫は、領主特務塔の扉を守るように立ち塞がる四体のゴーレムと向かい合った。

「これはこれはレルリラ姫、ご無沙汰してますね! リオナです。では、われわれについて改めてご紹介いたしますね!」
 スカーレット色のディルレムLが、前に出て挨拶をした。

 さきほど、フェオダール公爵がご丁寧に機体名と搭乗者を紹介してくれていたのだが、そこにはレルリラ姫はいなかったので、改めてリオナは四人と四体を紹介し直した。

 スカーレットともいう赤系の色で、巨大な爪を持ったゴーレムは、元黒獅将戦術なんでも相談室室長「慈愛の爪リオナ」の駆る「陸戦型ディルレムL」。

 ふじむらさき色で、謎の巨大な装置を抱えた巨体は、元黒獅将直属大魔王能力保全協会会長「悪戯(いたずら)な鬣(たてがみ)レーヴェ」の駆る「高機動型Rディルレム」。

 シュリンプピンクの色で、両腕が甲殻類のような大きなハサミになっているのは、元ルンドラ領主秘書室専属秘書「知識の尾アサード」の駆る「水陸両用ディルレムA」。

 ピーコックグリーンのカラーで、買い物かごを手に持っているのが、元黒獅将直属特殊魔導器研究員「自由の牙シシーシシシシザエモン」の駆る「買い出し専用Sディルレム」。

 …である。四人と四体の紹介が終わった。

「ええ…。毎回、かつての領主ディルガインがお父様のところに謁見されていた際には必ずディルガインのそばに付いていた付人四人衆の方々ですね。お久しぶりです」

 レルリラ姫も言葉を返したが、このあと戦いになるのは目に見えていた。だが、一応はこう続けてみた。

「リオナ、レーヴェ、アサード、シシーシシシシザエモン。降伏なさいませ。
 あなたがたは文官のはず。そんなものに乗ってまで戦うことはないはずです。
 仮に戦ったとしても今のわたくしの実力ならば、そのような土くれ人形になど負けません。
 そしてワルジャークも、いまここに集いし魔王達も、このあとの戦いで敗れるのです。
 邪雷王復活なども、させません。降伏を勧告いたします。
 もうワルジャロンドなどというものは、風前の灯火です。
 再びルンドラはウイングラードに戻るのです。
 これからはまた、ロンドロンドもルンドラもウェーラもスコトラも、再びともに力を合わせ、ときには議論を重ねながら国を営んでゆくのです」

「取り消してください」
「そうだそうだ!」「とりけして!」「とりけせー!」

「何をですか? 取り消せませんが?」

「とりけしてください…っ!!」

 と言って、リオナの陸戦型ディルレムLが巨体の爪を繰り出してきた。
 これにて降伏勧告は失敗である。

「我らの愛するディル様のお姿をモチーフにして作られたこのゴーレムを『このようなもの』と言ったことを取り消してください、レルリラ姫」

 ぶおん、と、迫りくるディルレムLの爪攻撃をレルリラ姫がジャンプでかわすと、

「そうだそうだー!」

 と言って今度はアサードのディルレムAが巨体のカニのようなハサミを突き出して、レルリラ姫を斬り砕こうとしてきた。まともに食らったら大変である。

「何を取り消せと言っているのかと思えば…、そ…そこですか?」

 ディルレムの爪とハサミがぶんぶん繰り出されてゆく。

「そこですかとは何ですか! 大事なとこです!」「そうだそうだあああ!」「とりけせー!」

「R輪芭(アーリンバ)ッ!!」

 レルリラ姫は波法を放った。
 芭蕉の花のような独特の形状の波球から波動が放たれる。

 ぎゅいいいいん!! ずううん!!

 リオナとアサードのディルレムは重なるようにR輪芭(アーリンバ)を受けて吹っ飛ばされた。

「取り消しません。
 ディルガインは誇り高く立派に戦いました。ですが、魔王の哲学に染まり、自ら魔王の力を得て聖騎士を殺し、竜たちの命を奪い、民を苦しめた、彼の行ったことは根本的に誤りです。彼を認めることはありえません」

「同じ『四本足』だったライト様は『蒼いそよ風』に迎え入れておいて、ディル様は認めないっていうのは矛盾があると思うけど?」
「そうだそうだ!」「そうだそうだー!」

 アサードのこの質問に対するレルリラ姫の答えは、双気陣(オーラブレイン)であった。
「呪文(スペル)…!」
 クィィィィンッ!
 レルリラ姫の左手より魔法により生まれた気が右腕に絡まりながら上空に球体を作り、倒れたディルレムLとディルレムAに向けて、二筋の弾道が放たれた。

「…双気陣(オーラブレイン)!」

 ゾアッ!

 放たれた双気陣(オーラブレイン)は、ズォウン! という轟音とともにディルレムLとディルレムAにとどめを刺した。

「リオナ! アサード!」

「矛盾? 矛盾などございませんが? ええ、ディルガインがライトさんのように、自らのあやまちを認めてこちら側に来るというなら話は変わりますが? 当然ですわ! でもそのようなことはございませんですわよね!」

 と、崩れ落ちたディルレムLおよびAに向かってレルリラ姫が叫んだ。

「どうしよう、もうふたりやられちゃいました!」
 とシシーシシシシザエモンが焦ったが、
「大丈夫、シシとわたしの装備はちょっと特別だもん」
 と、謎の巨大な装置を抱えた高機動型Rディルレムに乗るレーヴェが言った。

 レルリラ姫は残った二体のゴーレムに華粉翼王女杖(カフィングプリンセスワンド)を構えた。
「さぁて…、残る土くれ人形に乗る皆様はどうされますか? 改めて、あやまちを認めて降伏されてもいいんですのよ?」

「ディル様のためにも…負けられないもんね!」
 レーヴェはRディルレムのコクピットで、にやりと笑ってみせるのだった。

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