#56 主塔・玉座門前の再会
「レウ、ひさしぶり」
「ライト…」
「ワルジャーク様から白狐大帝っていう称号を頂いたんだって? おめでとうレウ」
「裏切っておいて、よく言うよまったく…」
ディンキャッスル主塔・最上階に一番乗りで乗り込んだライトは、玉座門の外を守る白狐大帝レウと対峙していた。
「フッ…こんな形でレウと戦うことになるなんてね…」
と、ライトが言う。
ライトの来訪があったので、レウは飲みかけのジンジャーエールに栓をして、門の脇の冷蔵庫に入れながら
「オレは全く納得してないぜ、ライト。ワルジャークさんは受け入れてるようだけど」
と、睨んだ。
「納得してくれないことに、感謝を感じるよ。それだけ僕は愛されてきた。どれだけ感謝してもしきれない」
「それでもオレを、その剣で斬るつもりでいるのか?」
「実は、そうなんだ。もう、心の整理はつけてきた」
「ああ…心の…整理か…冷たいもんだな…」
「僕の裏切りの罪は重い。でも、真実を知った今、世界のためにも、僕自身のためにも、あるべき自分に変わらなきゃいけない。
ワルジャーク様やレウや、ヒュペリオン、ディル、それにイグザードたち…ぼくはこのディンキャッスルでたくさんの皆から愛をいただいてきたのはよくわかっている。
でも、間違ってしまっているんだ。
世界にとって、魔王たちは、間違ったことをしているんだ。
だから僕は、あるべき本来の自分に変わった。魔王達を断罪することで自分の過去の罪を償うしかないんだ。
僕はもう二度と、二度とブレたりはしない!」
「もしもオレがどこにも属していないただのひとりの狐だったら…もしかしたら、お前がここを出るって言うんなら出させてやって、お前の好きにさせていたかもしれない。
だけど、オレたちはチームなんだ。ワルジャークさんの懐刀なんだ。
もらった愛の大きさなら、負けてないからな! 例え相手がお前でも容赦は出来ない!
ライト、オレは負けないから。絶対に、絶対にここを通さない!」
「レウ、ありがとう。今までの感謝も込めながら…レウを倒すよ!」
レウとライト。
ふたり、互いに、パワーを解き放って身体に纏ってみると、どちらも以前より遥かに強くなっていることがわかった。
「もう…オレの知ってるライトじゃないんだな…」
「レウも…僕の知ってるレウとは違うみたいだ…」
「思い切り来い、ライト!」
「レウもね!」
「ハアアアアアアッ!」
「ウオオオオオオッ!」
そして、ふたり同時に床を蹴って、互いの肉体をぶつけに行った。
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