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#22 鍋


 夜が更けた。
 ここは、ルンドラの市街地にあるパブ「ナベリン」。

 リオナ、レーヴェ、アサード、シシーシシシシザエモン。

 ディルガイン付人(つきびと)四人衆が、鍋(なべ)を囲んでいた。

「みんなおつかれー」
「かんぱーい」
「おっつー」
「おつかれさまー」
「今日は疲れたねー。裏方仕事多すぎ」
「ねー」
「議事録は、きらーい」
「きらいだけど得意ー」
「わたし専門外だから政策とかわかんないわー」
「僕もー」
「あはは」
「えー、政策バッチリまとめてたくせに、わかんないとかよく言うよねえ、リオナは」
「ですねえ」
「ねー」
「あらレーヴェ、そんなことないわよー?」
「ひゃあ、わかった、わかったよう、やー、くすぐったーい」
「出た、スキンシップ女子」
「さて、おっなべー」
「おなべおなべー」
「すいませーんビールあと四本ー」
「はい、よろこんでー」
「はぁー、今日のディル様エロかったですね…」
「シシ、いきなりシモネタかよ!」
「それはあなたがエロいのよ。シシ」
「へへ、いいですねリオナ、もっと言って?」
「ばかw」
「もう、いまの店員さんに聞かれちゃったわよ、ほら笑ってるw」
「リオナもディルガイン様のエロい漫画の本、描いてたじゃない」
「あの本はへんたいすぎて気に入ったよ。でも引くわ―ww」
「みんなもよくディル様の衣類をクンカクンカしてるじゃない」
「ぶっ」
「僕は隠れてしてたのになんでわかったんですか?」
「シシ…。隠れて…なにを?」
「なにをって!w」
「隠れてやるのはパフォーマンスじゃなくてほんとに変態よね」
「いやそれ普通にみんな変態だろw って普通じゃないな」
「はい、それは全員してますよね。リオナ含め全員本気ですよね」
「はいはい」
「どへんたいだ」
「わたしはディル様のしもべであるという職務に忠実なだけなの」
「どへんたいだ」
「どへんたいです」
「はいはい、どへんたいリオナですっ。でもこれ、愛なのよ、愛」
「うわぁ…リオナ萌える…」
「萌えないで、アサード!」
「よし、脱いでいいですよリオナ」
「シシ、意味わかんないww」
「どへんたいなのはディル様が悪いよね、あんなどへんたいいないよね」
「「「意義なーし」」」
「レーヴェ、顔、赤いよ」
「えへへ、みんなへんたいすぎるよう」
「レーヴェもね」
「まあね、何をいまさらだよね」
「もうさ、ディルガインどへんたい四人衆に改名しようか」
「そんな名前にしたらディル様のハーレム要員以外の仕事がなくなっちゃうよw」
「ハーレム要員いうなw」
「秘密任務だしねそれ。…まあみんな有能だから大丈夫ですよ」
「そうだよね」
「イモイモインフィニティー装置も発見して機能解明したしね」
「芋怪人シリーズも開発したしね」
「作戦も立てられるし魔王能力も引き出せるしね」
「おっぱいもありますしねー」
「リオナ一名だけねー」
「ちっぱいが三名…」
「それ、秘密任務以外の仕事で役立つの?」
「もちろんです」
「てゆーか、男の子のも、ちっぱいって言うの?」
「知らないわよ」
「いけますね」
「なにが?」
「うひゃひゃひゃ」
「へんたいにんじん美味いです」
「へんたいにんじん言うな、シシ」
「あっ店員さん」
「………」
「………」
「………」
「………」
「ビールお待たせしましたー」
「はーい」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…肉、炊(た)けた?」
「肉、炊(た)けないね」
「たいへんだ」
「へんたいかつたいへんです」
「シシさあ、絶好調だね」
「もうw あ、ビール冷えてるよ」
「のどが鳴るねえ」
「そういやシシ、芋怪人シリーズで、芋獅子仮面っていうの、作ったでしょ」
「はい」
「あれね、今日、爆誕(ばくたん)したんだね」
「爆誕…」
「そうそう。芋獅子仮面が敵の足止めをしたって、ディル様がワルジャーク様に報告してたよね」
「ディル様の役に立てたんですね」
「さっき挨拶に来たよ。仮面一枚残してやられたポテ、だって」
「うわあ、結構いいスペックなのにね、あの獅子の仮面」
「仮面、ディル様と五人で開発したもんね」
「仕込み風船もね。まあほとんどシシがメイン開発者だよね」
「いやー、ディル様のために命がけで足止めしてくれたんですね」
「うん」
「その、芋獅子仮面Bっていう子にね、今日の打ち上げに来たいポテーって言われたけど、断っちゃったよ」
「なんで?」
「だってこの店、ほかからの飲食品持ち込み禁止だもん」
「あはははは」
「だよね」
「食品w」
「芋獅子仮面Bどうすんの? ディンキャッスルで生活するの?」
「うん、ワルジャーク様に気に入られてたよ」
「よかったあ」
「あいつの仮面の予備作ってあげようよ」
「そうだね、あと、武器も買ってきてあげよう」
「いいですねー」
「パンツも買ってあげようよ」
「いいのよ全裸で」
「いもだしね」
「いもですもんね」
「いもである以上は仕方ないわ」
「いも悲(がな)しいね」
「ぷっはあ、ビールうま」
「おなべ、火力もっとあったほうがいいんじゃないかしら」
「おっけー」
「それでさあ」
「うんうん」
「ディル様、領主のおしごと、おろそかになさるんだね」
「え、アサード、なにそれ?」
「さっき、メガネの副領主のフェオダール公爵が来てたんだよ。ディル様がさ、フェオダールさんに、いっぱい仕事を押し付けたり、打ち合わせしたりしてたよ。俺ね、一緒に打ち合わせたんだよ」
「へえー。秘書は大変だねアサード」
「ディル様の仕事、あのメガネに任せちゃえばいいじゃない、フェオダール様、お仕事大好きだし、ディル様のことも大好きだもの」
「あのメガネってホモなの?」
「ぶっ」
「しらないわよ」
「僕は両方ありだなあ」
「うっさいわ、シシw」
「あのメガネも何かの魔王の手下だって聞いたような気がするわ」
「ほんと?」
「知らないわ。でもただ者じゃないことは確か」
「それでディル様、領主のお仕事を減らして、どうされるの?」
「今日、散々な目にあったっしょ。ディル様」
「うんうん」
「花粉症で、おしる、いっぱい出してねえ」
「うんうん」
「ハアハア」
「クンカクンカ」
「もうw みんな秘密任務やりすぎでおかしくなってるw」
「でも、かわいそうだったよねディル様」
「うん、ひどいよあんなの」
「とんでもない敵がいるわよね。私あんなの絶対むり」
「それでレウ様もお怪我なされたけど、レウ様ひどい重症なのよ。アサードがメガネと打ち合わせてる間、あたし少し看病してたの」
「僕もメガネと打ち合わせ終わってから少し手伝ったよ」
「そうそう」
「へー」
「ディル様もライト様も、レウ様をすごく心配してたしね」
「そっか、そうなったら確かに心配するわよね」
「あっ、レウ様ね、レウ様ね、きつねになってた。きつねかわいいよねー」
「きつねレウ様かわいかったね。なでなでしたかった」
「きゃー、きつね見たかったーいいなあレーヴェとアサード」
「でもきつね様、一杯お怪我されててね、かわいそうだった」
「うん、痛々しかった」
「へー」
「レウ様のお怪我は酷いなんてもんじゃないよ、だってシーザーシールドも、首の魔力核も破壊されちゃったんだから、大変だよ…」
「じゃあレウ様、魔力も使えなくなっちゃったのね」
「ディル様とライト様、すっごくレウ様の看病してた」
「ヒュペリオン様は?」
「その隣で敵の花粉を分析してた。兵たちと」
「へえ」
「なんかライト様、怒ってたね、どういうことですか?って」
「でもワルジャーク様、いつもはぐらかすでしょ」
「だよね」
「うん、そのあとワルジャーク様とライト様、喧嘩になっちゃったんだよ。あんなのはじめて」
「ええっ」
「まじですか?」
「ライト様、家出するとかしないとか何とか言って取り乱してた」
「家出ですか!」
「でもワルジャーク様はいつもどおり余裕でね」
「ええーっ!」
「ああ、ライト様つらいわよ、それじゃ」
「それでね、イグザードとか、ヒュペリオン様がライト様をなだめてたけど、駄目だったみたい」
「えっ、家出…したの? ライト様」
「わかんない」
「えっ、そこ大事よアサード」
「どこに家出するんですかね」
「わかんない」
「ライト様も、レウ様のことお好きだもんね」
「ワルジャーク様も、ライト様には、何にも教えてあげないんだね」
「でも…あれも…ワルジャーク様の優しさなのよね…」
「それも伝わってるとは思うけどね」
「それでね、レウ様のシーザーシールドは、ワルジャーク様が直す方法を探すって言ってたよ」
「出来るのかな…」
「わかんない」
「いつも、『私は破壊しかできない』って言ってるよね」
「意外と破壊しないよ」
「それ知ってるw」
「それディル様も言ってたw てゆーかシシ、手伝ったら?」
「ワルジャーク様は魔界宮とか悪魔洞窟とか魔女の魔法屋とか、いろんなところとの取引を大切にされてるから僕なんかいいですよ」
「ディル様しょんぼりしてるし、早く治るといいね、レウ様」
「ねー」
「そういや、あのイグザードってネズミの子はどこから来たの?」
「え、誰だっけそれ」
「え、レーヴェは知らない? ライト様のお付きのメイドよ」
「どこから来たんですかね、ただものじゃないですよね」
「…あの子、なんかすごい。四本足並に強いんじゃないかしら」
「えっ、そんなに?」
「なんとなくね、わかる」
「リオナが言うなら間違いないね」
「ディル様の地位は私達がサポートして守らないとね」
「今日、ディル様を見失わなかったらもうちょっとお役に立てたのにね」
「そうね。でもまあ作戦いっぱい提案してたから何とかなったわ」
「大丈夫ですよ。ディル様はいろいろ苦戦したけど無事だったし、芋獅子仮面も働いてくれたし、イモイモ・インフィニティー装置でワルジャーク様の城攻めの役にも立てたし、議会でも僕達の立てた政策が支持されてますし、なんといってもディル様は、もう僕達四人なしではいられない身体なんですからw」
「最後のは、お互い様でしょ、シシ」
「そうよね」
「あ、ソーセージおいしい」
「…ディル様のソーセージ…いただき…」
「キャー」
「いいなー秘密任務////」
「ちがうでしょw 中学生かw」
「どれどれ」
「じゃあみんな、僕のソーセージも…いたたたた」
「うっさいシシww」
「シシ最低wwww」
「自重しろシシww」
「…痛い…」
「それでさ、ディル様さ、いろいろ苦戦したこと、別にワルジャーク様に、怒られたわけじゃないんだけど、ディル様、責任感じちゃったみたいなんだよ。でね、レーヴェが焚(た)きつけちゃった」
「あたし焚(た)きつけちゃったの。これじゃやばいんじゃないですかって。心配だもん。つい言っちゃったらディル様、決意しちゃった」
「えー、ディル様ったら…」
「で、どうするの?」
「また強力な魔力を得て、パワーアップするんだって」
「どうやって?」
「今度は竜のタマゴを使うのよ。しかもいっぱい。だからあたしはディル様の魔力制御石の調整の準備にかかったよ。超大変な仕事」
「そういやさ、レーヴェそれどういう仕組み?」
「タマゴの精霊を…、ええと、説明すると長くなるよ。すっごく」
「魔法の触媒…よね、私そういうの聞いたことあるわ」
「大体わかった。…また何日もかかるんじゃないの?」
「そうなのよアサード。あたしもこれから大変」
「どんどん人間離れしていくね、ディル様」
「素敵」
「どこまでもついてく」
「あれ? 竜のタマゴってどこにあるの? しかもいっぱいって」
「ウイングラード本島にさ、ネッスーっていう竜がいるじゃない」
「ネシ湖のね」
「うんうん」
「はいはい」
「いるいる」
「ネシ湖、いるらしいね、ネッスーが」
「湖竜っていうんですよね」
「でね、ディル様ネシ湖に直接タマゴ強奪に行くって」
「うん、もう行っちゃった。あ、ごめん、最初に言うべきだった」
「えっ、まじでもう行っちゃったの?」
「ネシ湖に行く、宅配所の飛空挺があるじゃない。魔報で交渉して、乗せてもらうことにしたんだよ。領主は顔が利くからね」
「ひとりで?」
「そのはず」
「ええーっ、秘密任務要員はひとりも連れてかなかったの?」
「リオナ…ほんと好きよねw あたしも行きたかったけど…」
「いや、だってさ、僕たち仕事いま一杯じゃないですか、色々と」
「俺、ヒュペリオン様と一緒に、ディル様の荷造り手伝ったよ」
「いいなあアサード。秘書ってずるい」
「ディル様も、やることはやーい」
「アサードもヒュペリオン様もディル様と仲いいよね」
「ヒュペリオン様もホモなの?」
「ヒュペリオン様はワルジャーク様が本命よ」
「それは間違いないね」
「アサードはディル様が本命なの?」
「肉うまっ」
「あ、ごまかしたw」
「アサードのディル様好きは表情見たらわかるよね」
「お前もね、シシ」
「男はみんなホモなの?」
「うちのお父さんは違ったよ」
「僕は両方いけます」
「それ知ってるwww」
「アサードはどうなのよw」
「ええ? うん、肉食べようね、リオナ、肉、ほら、あーん」
「あ、あーん」
「ごまかしたw でもまあ、アサードは秘密任務うまいよねw」
「だから気になるのよ…おいしいわね」
「こっちは半煮えだ」
「食べちゃえ」
「うん」
「まあ俺たちも仕事さっさとやっちゃって、ディル様手伝おうよ」
「そうだねアサード」
「あたしディル様のいない一日なんて耐えられなーい」
「レーヴェの言うとおりですよ」
「これからもっと忙しくなるよ。だってワルジャーク様、世界中をワルジャロンドっていう国にしちゃうんだから」
「すごいよね」
「ほんとに、あのロンドロンドが、陥落しちゃうなんてね」
「だよねー」
「ディル様のおかげだよ」
「そうそう。それと、みんなのおかげだよね」
「いろいろディル様の裏方がんばってるもんね」
「ふかしいも、作りましたしね」
「兵たちとみんなでね」
「いも、いっぱい増やしたしね」
「おもしろかったわ」
「でも支配って大変なんだね」
「ちゃんと支配できるかなあ、わが軍」
「ディル様もいつも勉強してるけど、大変そうだね、魔王学」
「ディル様…」
「でも、そのおかげで、こうして俺たちいられるんだもんね」
「えろとーくしたりねw」
「くんかくんか…」
「あははw」
「あたしたちさ、しあわせだよね」
「えへへ。ディル様のおごってくれたお鍋もうまいしね」
「しあわせしあわせっ」
「がんばろうね、あたしたち」
「あ、なにか追加、頼みましょうか」
「わーい」

 こうして…、鍋を囲むディルガイン付人四人衆なのであった。


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