#20 芋獅子仮面の芋と謎
一方、その頃。
ロンドロンドガーデンプレイスのバッキングミ神宮殿近郊では、ガンマとアルシャーナが、最後の芋獅子仮面(いもじしかめん)を追い詰めていた。
倒された二体の芋獅子仮面の身体をかつて構成していた沢山のジャガイモが、一面に転がっている。
そして、粉々に砕かれた仮面も転がっている。
「なんで…仮面が弱点だとわかったポテ…」
「普通わかるわい!」
残された芋獅子仮面の悲痛な問いに、残酷な答えが帰ってきた。
二人の兄弟を失った芋獅子仮面は、打ち震えた。
「よくも芋獅子仮面CとDを…。ひどいポテ…。ひどさここに極まれりだポテ…。この…イモでなしっ…!」
「イモちゃうわ!」
「もしCやDと一緒に、まだ見ぬ大技(おおわざ)・三体連携必殺イモジネーション芋獅子トライアングル芋ボンバーネクストでんぷんジェネレーションほくほく芋アタックさえ出せていたら、難なく勝てたポテに…!」
「芋、何回出てくるねん!」
いちいちツッコんでしまうガンマであった。
三体の芋獅子仮面は、自分こそが「芋獅子仮面B」であると主張していたわけだが、もう最後まで生き残った彼がBということで良いのかもしれない。
まあどうでもよいわけだが。
「さぁって、あと一体♪ あと一体♪」
アルシャーナは、ぴょんぴょん飛びながら攻撃のタイミングを見計らった。
「呪文(スペル)……雷散弾(ライオサンガー)!」
ガンマが仕掛けた。
ドン!
「ポテエエエエエエ!」
芋獅子仮面の身に雷撃が注がれた。
「いまだっ! 柿Ξ脚(かきくうきゃく)!」
アルシャーナが仮面めがけて蹴りを向けた。
「ディルガインさまあああああ!」
芋獅子仮面は生みの親の名を叫んだ。
アルシャーナの蹴りがいよいよ当たるというその瞬間、
「あかん!」
そう、ガンマが叫ぶと同時に、芋獅子仮面の仮面だけが、シュン、と消えた。
ズガァァアン!
アルシャーナの柿Ξ脚は芋獅子仮面を構成していたジャガイモの山に飛び込んだ。
バラバラバラバラ…。
イモの山が、崩れていった。
しゅたっ。
アルシャーナは着地し、
「仮面が…消えた…!」
と叫んだ。
「誰かが仮面だけ回収したんや。おそらく…ディルガイン!」
ガンマが回答した。
「…そういうことか…。ああっ、仮面さえあれば別のイモでもまた芋獅子仮面は成るもんな。これ…」
「あれ…? なんや…このイモ…」
ふと、ガンマは足元のジャガイモを二個拾った。
「アーナ、このイモ、見てみ」
「…あれ…? この二個は、まったく同じ…形だ…」
「…散らばっとるやつは、違う形やな…」
「どういうことだ?」
「八百屋用の魔法…使うわ」
ガンマは、魔法を唱えた。
「呪文(スペル)…芋並(イモーナラヴェル)!」
ジャガイモの山が浮かび、くるくると回ったあと、整然と並べられた。
「これは…!」
「…!…」
「どういうことだ? ガンマ」
「ひいふうみい…」
ガンマは、検証をはじめた。
◆ ◆ ◆
「ガンマ、結論から頼むわ」
「このイモは、十五個のイモが、百十一回コピーされたものや」
「全部で何個?」
「三体ぶん合わせて一六六五個」
「三体に分かれた場合、一体あたり何個?」
「五五五個や」
「そんなにある?多くないか?」
「イモ一個平均百二十グラムで、五五五個やと六十六キロ。そんなもんやな」
「はあ…」
「問題は、そこやないで」
「芋獅子仮面のやつ、このイモの形がエロい、とか言ってたけどエロい形のイモは実はなんと百十一個もあったってところか?」
「問題は…そこでもないで…」
「…イモを…コピーした…?」
「…せや」
「どうやって?」
「おそらく…イモイモ・インフィニティー装置…」
「イモイモ・インフィニティー装置?」
「イモイモ・インフィニティー装置や」
「イモイモ・インフィニティー装置…!」
「イモだけを無限増殖させる装置…。神話に伝わる、伝説の魔導器や。まさか、実在したとは…」
「伝説って、何でもありなんだな…」
「伝説って、何でもありなんや…」
伝説は、何でもありなのであった。
アルシャーナは、遠くから、レルリラ姫を乗せた竜のトムテが自分たちのほうに飛んでくるのを確認した。
「タクシーが戻って来たぜ、ガンマ」
「リーダー、大丈夫かいな…」
そう言いながら、魔法の風呂敷で一六六五個のジャガイモを包むガンマであった。
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