#19 剣と矢
下界(ドカニアルド)暦九九八五年一月七日、夕刻。
ゼプティム界五号次元、下界(ドカニアルド)ウイングラード騎皇帝王国・王都ロンドロンドの歴史的な一日は、引き続きその歴史的事態を進行させていた。
都(みやこ)の東西南北から、風が集(つど)う。
東は、港町ブリトレルス方面から。
西は、ノリコッチ大聖堂方面から。
南は、ストーンベンチ遺跡方面から。
北は、ウイングラードのへそ・ペパーミンガム方面から。
四方から、ゆるやかに寄り集まってゆく風が、まうまうと舞う舞う。
それは少年のまわりをくるくる回り、赤い鉢巻(はちまき)が躍る。
そこには、風帝がいるのだ。
参宮ロンドロンド街道とクーモズ川の交わる観光名所、パワーブリッジ前に、ブルーファルコンを宿した、風帝の卵がいるのだ。
神風(カミカゼ)のケンヤが、白狐帝レウと対峙しているのだ。
すこし離れて、レルリラ姫は先ほどケンヤに力強く言った言葉を、もう一度、今度は願うように、小さく言った。
ケンヤが貼った、おでこの絆創膏(ばんそうこう)に、そっと手をあてて…。
「…絶対勝ってね…ケンヤ…」
ピロリロリーン!!
パワーブリッジにそびえる、ドア付きの妙に太い柱も、同意の合図をした。
妙に太い柱は、MPがもうない。最早、そのくらいしか出来ることがないのだ。
黒獅将ディルガインの火球を受けて深く傷付いた竜のトムテは、かぐわっていた。
花の香…。これが回復華法かよ…。
疲労と負傷の蓄積した 鱗(うろこ)の一枚一枚が喜んでいるようだ。
幼い頃、自然豊かな故郷のネシ湖で、こうやって花の香を嗅いだっけ…。
朦朧とするトムテの脳裏に、幼竜の頃の記憶が、ちらとよぎった。
レルリラ姫の応急処置の効果を感じながらも、トムテはまだその身を起こせずにいた。
想像以上にダメージが大きい…。頭の骨の一部がヒビ割れているようだ。
この回復では、この傷は治癒しないのかもしれない…。
「ひ…姫が勝ってねと言ったらもう、勝つっきゃねえからな、ケンヤの旦那!! 姫の命は絶対だぜ…! うぐっ…」
話すだけでトムテの眉間に痛みが走る。
ケンヤは白狐帝レウを見つめながら、再び親指をぴっと立てて、トムテに見せた。
「もう話すなよトムテ。わかった。あとは…オレに任せろ!」
すうっ…。
ケンヤは、自らのもとに一堂に会する風たちを吸い込んで、集束した風を味わった。
まるでスポンジが吸水するかのように、ケンヤの心に戦意が満たされてゆく。
(オレ、だんだん戦士(ファイター)になっていってるんだな…)
少年がそう思うと、「勇気の証」という名称の赤い鉢巻(はちまき)が、返事をするかのようにぎゅん、と靡(なび)いた。
「白狐帝レウ。あんたを…倒す!」
そんなケンヤの宣言を聞いたレウは、狐の尻尾でしゅんっ、しゅんっ、と、「8」の字を描いた。
白狐帝レウは、姫を含む目上には目上向けの砕けた言葉遣いをする。ディルガインと入れ替わりに登場した時にはケンヤにもそんな言い方をしたが、やはり思いを改めたか、ケンヤにはその言葉遣いをしないことにした。
「言っとくかんな。ケンヤ=リュウオウザン。もう、この身があんたの攻撃を受けることは、ない。
オレはな、あんたを後悔させに来たんだ。
あんたは、偉大なる邪雷王シーザーハルト様の子を産むべき神聖なるこの処女の肉体に、傷をつけたんだ。
それがどれだけ罪深い愚行なのか、わかるかよ」
「レル、…ショジョってなに?」
「はて。わかりません」
「だあっ、旦那も姫も、ガキは知らなくていいんだよ!」
ピロリロリーン!
ケンヤとレルリラ姫の問答を竜のトムテが制止し、柱が同意した。
レウはふん、と鼻を鳴らした。
「…子供め。子供だからって容赦はしないかんな。なぜなら…あんたは、邪雷王様が最も忌むべき最悪の存在、風帝!」
ケンヤは敵の殺意を感じた。負けられない。
「レウ。それは…オレも同じだ。邪雷王シーザーハルトもワルジャークもあんたも、親や…大切な人たちの、仇(かたき)だ!」
「ケンヤ=リュウオウザン。はっきりオレの立場を言っとくよ。
オレはワルジャークさんに、時間稼ぎの役割を期待されてここに来たんだ。だけどな。オレの気がそれで紛れると思うかい?
オレは今の主人…ワルジャークさんを尊敬してる。ワルジャークさんを支える一足となり、ワルジャロンド計画を支えるつもりだ。
だけどな、オレはワルジャークさんの片足であると同時に…いや、それ以上に、邪雷王シーザーハルト様の片腕なんだ。
いつか風帝を倒す。オレはずっとその決意を携えてきたんだ!」
「足になったり手になったり大変なんだな。…わかった。あんたとは…全力でやる」
ケンヤがそう言ったので、レウは敵の戦意を汲んだ。
「開陣(かいじん)だ。オレは今からあんたのような子供を葬るんだ。ちゃんと名乗りな。…名乗らせてやるよ、ケンヤ」
「葬られるもんかよ…ッ!」
ケンヤはレウを見据え、名乗った。
「吾(われ)、故あって元服を待たず、神託の陣を告ぐ。
風の声を聴け。
吾、疾風戦士(シップーファイター)ジンと、孔迅風水師(クウジンジオマンサー)アルマの子!
神風の…ケンヤ!」
ヴォウ!
と、風が舞った。
称号なき元服前の子供が、元服後の大人に正式に死闘を申し込むときには、ひとりひとり異なる、このような名乗りがある。
行われないことも多いが、あえてレウはケンヤに名乗らせ、そして自分も改めて名乗った。
「吾、故あって神風の元服を待たず、死後この沙汰を待つ。
つまみつままれ、つみつまれ。
つままれたとき、つままれるところにつまむ者あり白狐あり。
ワルジャークの四本足が一足、白狐帝レウ!」
ズォン!
と、白き凍気が弾けた。
互いに名乗り、
開陣した。
ケンヤは言った。
「レウ。あんたが名乗らせてくれたこの名前には、意味があるんだ。
…オレの名前のケンヤっていうのはな、カーン文字だと、剣、という文字と、矢、という文字で出来てるんだ。
邪雷王たち…あんたらが殺した、オレの父さんと母さんが、心を込めて決めた名前だ。
剣のように運命を斬り開き、矢のように真っ直ぐ突き進む。
あんたは、今、その覚悟に、討たれる!」
「ふぅん、面白いじゃないか。剣と矢か」
レウは、微笑んだ。
「ケンヤ、あんたに名乗らせてやってよかったよ。そういうエピソードがあると、倒す甲斐があるってもんだ。やってみろよケンヤ」
「レウ…! 後悔…すんなよ!」
ケンヤの構えた戦士剣・風陣王の宝玉がぎゅん、と呻(うな)る。
「風来(ふうらい)! 風矢陣(アネモスヴェロス)!!」
刀身は風陣王に吸い込まれ、宝玉の左右にある金属部分が伸び、宝玉はケンヤの右腕に装着された。それは、弓の姿であった。
ケンヤは風を呼んだ。
「風来風来風来風来…!!」
ぎゅうううううん……!
東西南北から集った風が、ケンヤの風陣王の宝玉に吸い込まれてゆく!
「風行(ふうこう)…。風矢陣(ふうやじん)…! ア…ネ…モ…ス…! …ヴェロスッ!!!!」
ずあっ!
ケンヤの握り拳が、回転しながら突き出された。
すると、圧縮された風の矢…「アネモスヴェロス」が放たれた!
「おああああっ! シーザーシールドッ!!」
レウの両肩と腰回りに展開する「シーザーシールド」が高速で姿を変え、盾となる。
ズォウン!!!!
ケンヤの放った風矢陣アネモスヴェロスは大きな音をたて、その直撃を示す爆風が巻き起こった。
「了矢(りょうし)ッ!」
もうもうと土煙が舞う中、ケンヤの技名乗りをレウが返す声が聞こえた。
「受矢(じゅし)ッ!」
「!!!!」
と、ケンヤの驚嘆。
レウは…レウは…、平気なのだ!
「シーザーシールドなめんなよ。言ったろ? もう攻撃は受けないってな!」
「う…嘘だ!」
「嘘なもんかよ。剣と矢のケンヤ。じゃあ次は剣だな。なんなら今度は、さっきディルガインさんを倒そうとしたあの剣技(わざ)をやってみろよ。神風斬(かみかぜぎり)って言ったよな、あれだ!」
「レウ…知らないぞオレは…ほんとに…ほんとに…やるからな?」
「やればいい」
「やるって言ったらやるんだぞ、いいのか? レウ」
「しつこいぞケンヤ」
「うう…」
「怖いんだろ? ケンヤ。神風斬を破られるのが!」
「う…う…うわああああああああああ!!!!!!!!」
ケンヤが戦士剣風陣王の柄を握った瞬間、誰かがケンヤの上腕を後ろから押さえ、制止した。
「あああ!!!!?」
「だめですケンヤ…!」
ケンヤが振り返ると、ふるふるふる、とレルリラ姫が首を左右に振った。
「ぴいぴいぴい!」
小鳥のぴちくりぴーも姫に賛同した。
「うわああって言うのはいいけど、そういう、逃げ腰になったうわああ、っていうのは、ダメです。自暴自棄な剣はいけませんよ」
「あう、う…」
「はい、ケンヤ。ゆっくり息を吸って」
すううう。
「はい吐いて」
はああ…。
「ちょっとは落ち着きました?」
「あ、ああ」
「なまむぎなまごめなまたまご!」
「なまむぎなまごめ…な…なまたまご!」
「ふうやじんアネモスベロス!」
「風矢陣アネモスヴェロス!」
「ヴェロス? ベロス?」
「ヴェロス」
「はい。よろしい! 絶対勝ってね!」
「ぴい!」
「…さ、さんきゅ」
にこ、とレルリラ姫はケンヤに笑顔を返した。
(これが将来、人の上に立つべき者なんだな…)
ケンヤはそう思ってから、もう一度深呼吸をした。
そしてもう一度、はじめた。
「風来風来風来風来…!!」
ぎゅうううううん……!
「おいケンヤ、その技、リクエストと違わくないか?」
「それよりレウ、邪雷王ってチンコあるの?」
「ほぇ?」
「風行!風矢陣アネモスヴェロスッ!!!!」。
ずあっ!
「邪ら…?」
ズォウン!!!!
ケンヤの放った風矢陣アネモスヴェロスは大きな音をたて、その直撃を示す爆風が巻き起こった(二回目)。
「風来風来風来風来、風来風来風来風来、風来風来風来風来…!!」
ぎゅううううん…! ぎゅううううん…! ぎゅううううん…!
「アネモスヴェロス、アネモスヴェロス、アネモスヴェロスッ!!!!」
ズォウン!!!! ズォウン!!!! ズォウン!!!!
「ばーかばーか!」
土に埋もれたレウは、がばっと立ち上がった。
「ケンヤ、てめ、しょ…小学生かああああっ!」
「で、あるの?」
「見たことないから知らねえよ、ばかああああ!!」
ピコン。
どこから出したのか、レルリラ姫がケンヤのうしろから、王家に伝わるピコピコハンマーでピコンした。
「このウイングラード騎皇帝王国王女・レルリラ=ウイングラード=ワースレモンが命じます。
あなたは、このわたくしをはじめてお姫様だっこした男性として、もう二度とそんなシモネタを使って戦ってはいけません。例えあなたが小学生だとしてもです。いいですねケンヤ」
「小学校なんて行ってないよ、旅人の身だから」
「へりくつはダメ!」
ピコン。
「ああもう、わかったわかった!」
「ケンヤには幻滅しましたわっ! もう、ケンヤのばかっ!」
ぷう、と姫が膨れた。
「あっはっはっは!」
ケンヤは笑った。すっかり緊張は解けた。
「さあてレウ、どうだい、受けないはずの攻撃を受けて!」
「くっそガキが…調子に乗って、セコい手を使いやがって…!」
レウの瞳は濡れ、赤く光っている。
「風帝ってやっぱ最悪だ! 最悪最低だ!」
「そして最強だろ?」
「茶化すな!」
「…? 泣いてるのか…なんで…」
レウの涙腺は緩い。気持ちが入ってくると涙が出る。
「こ…子供を葬るから、ちゃんと戦ってやろうって思ったオレがバカだった。あんたは、またしてもこの神聖な身を汚したんだ。そして…もっとやってはいけないことをした…」
「邪雷王を汚したって言いたいんだろ」
「そうだ!」
「あんな奴、くそくらえだね!」
「ま…また汚したな…!」
「いちいち数えるなよ! 仇(かたき)なんだ! そういうことなんだよ!」
「…もう一度…言ってみろ…」
「く そ っ く ら え だ !」
「ふう…ふう…ふう…」
レウの息が荒くなってきた。
「…ブッコロス…」
レウは頭部のバイザーを外し、手の甲に装着した。
「レル! 今すぐ逃げろ! トムテと鳥つれて! はやく!」
ケンヤが叫んだ。
「え? でもそしたら…」
「風が香りを運んでくるからわかる…この風は…油揚げの匂いだ…。お城で見ただろ、レル。こいつが油揚げを使って、何が出来るのか!」
そう、レウは、油揚げに敵を封じることができるのだ。
「でもケンヤ、あなたひとりじゃ!」
「風で、なんとかする!」
「どうやって!」
「風に聞くさ!」
「でもでも!」
躊躇するレルリラ姫をひょい、と抱え、竜のトムテが舞いあがった。
「ま…まかせとけ、ケンヤの旦那!」
傷付いた身体で竜のトムテはぎゅん、と戦場を離れた。
「ぴいぴいぴい!」
と、小鳥のぴちくりぴーもその後を追って行った。
「無理をしてはいけませんよおおおおお!」
と、遠くからレルリラ姫の声が風に乗って聞こえてくる。
少年には、彼女に返事を叫び返す余裕はなくなっていた。
ケンヤは、敵の構えから繰り出される風を読まなければいけないのだ。
白狐帝レウの手甲で、ダイヤ形に輝く板状の中央面から、すうう、と、パック入りの二枚入りの油揚げが召喚された。
バーコードがついている。スーパーで売っている普通の油揚げである。
ぶんぶんと尻尾を振り回しながら、レウが叫んだ!
「アヴラージェ・アヴァランシュ!!!!」
ぎゅん!
油揚げの実体から、白く光る透明な実体のないエネルギー状の油揚げがいくつもいくつも放出され、吹雪のような波動となり、ケンヤに襲いかかった。
(教えてくれ、風よ…)
ケンヤは、風を読んだ。
「よし、…盾風(タテカゼ)っ!」
ケンヤが左腕を掲げると、ぎゅううん! と、風が激しく旋回し、風による盾を形作った。
ケンヤの胸部には物理攻撃を防ぐための「ハヤブサシールド」という盾もあるのだが、ケンヤは風を操れるので、こういう盾を用意することも出来るのだった。
ケンヤに向かった油揚げの吹雪、アヴラージェ・アヴァランシュは、盾風(タテカゼ)に阻まれてその動きを止めた。
油揚げの吹雪はそのまま盾風(タテカゼ)に絡まり、竜巻となって空に巻き上がっていった。
ケンヤは
「風来風来風来風来…!!」
と言いながら、右腕で戦士剣・風陣王の柄(つか)を取った。
風来風来と、風が呼ばれたことで、上空の竜巻は改めて風陣王に収束していった。
ぎゅん、ぎゅん!
上部には刀身が伸び、左右には弓が伸びた。
風陣王は、剣と弓、両方の機能を展開させたのだ。
ケンヤが叫んだ。
「剣と矢だぜ! レウ!」
刀身に高速で絡まる風。風陣王は、剣の姿をも変えたかのようだ。
少年の叫びがパワーブリッジに響く。
「どぅああああああああああああ!!!!」
ズァン!!!!
とケンヤは、一斬したあと、
「でぃやあああああああああああ!!!!」
と、風の矢(アネモスヴェロス)を放った。
ズオオオオオウウウウンン、と、大きな爆発が起こった。
「…な…なんだとお…!」
レウの腕に装着された手甲の中央に風の矢(アネモスヴェロス)が刺さり、ぴしぴしとヒビが入ったあと、それは、ぱりん、といって砕けた。
「今だ!」
レウが怯んだ瞬間を見て
「もう一丁ぅおおおおあああああ!!!!」
ズザン!!!!
と、剣を振り下ろした。
「戦士剣風陣王神風斬、連斬!
及び、風矢陣アネモスヴェロス。
了撃!!!!」
ドン!
散る風。舞う埃(ほこり)。
ドォォォオオオン…
爆風が轟いた。
そしてケンヤは、ふと、違和感に気付いた。今のインパクトは…覚えがある。
「おん…!?」
攻撃を喰らわせた場所に眼差しを向けた。
「ああっ!?」
レウを斬ったはずのその場所に、
レウは、
いなかった。
いなかったかわりに、
いなりずし。
漢字で書くと、稲荷寿司である。
「また、いなりずしっ!!」
レウがいた場所には例によって、レウのかわりに、小さい稲荷寿司が一カン、まっぷたつになって転がっていた。
「きつねにつままれたようだ、またしても…ッ!!」
そこに、きつねの声。
「また化かされたな!
オレの超呪文(ネオスペル)・『稲荷転狐(イナリーシャルイナリュージョン)』に!」
「召還石を砕いたのに…稲荷寿司、呼べたのか?」
「聞いてたか? 稲荷寿司のほうは魔法だよ。それよりその前にオレが吹雪いた油揚げはどうなった? ケンヤ」
「ええ? えーと、盾風に取り込まれたよな。じゃあ、神風斬に合流して消滅した」
「もったいない…」
「そっちが悪い。レウ、食べ物を武器にしちゃいけないんだぞ」
「ケンヤ。風帝っていうのは世界を消すような存在なんだ。駄目だな、世界を粗末にする男が、油揚げの有効活用を悪く言っちゃあ」
ケンヤは言い返した。
「違うッ!」
そのとき、ポン、という音を立てて、レウにディルガインからの魔報が届いた。
《しウすまめ\あレぬどためむ○クルヅカーワさまもそわをお望みだ○そとれ\しわじわもづルIつャルコソ発ど、つさせぬな○ デルガイイソ》
「?」
「レウすまぬ、足止め頼む。ワルジャーク様もそれをお望みだ。それと、くれぐれもブルーファルコン発動させるな。ディルガイン……ってことか。
ありゃりゃ…。ディルガインさんてば、相当ラリってんな…大丈夫なのかな…」
(今ごろディルガインさんは死んでるんじゃないか?)
と、レウは考えてしまった。
レウは、自分の望むものをいくらでも与えてくれる家主であるディルガインによく懐いていた。
邪雷王の思想にあこがれるディルガインと食事をしながら、邪雷王に会ったことのないディルガインに邪雷王のことを話してあげるのが好きだった。
ディルガインは先程、レウに貸しを返すと言っていたから、今度の休みにちょっと遊んでもらおうかな、と思っていた。
だから、ディルガインに死なれたら困るレウなのだった。
足止めにしても、ブルーファルコンを発動させないことにしても、元よりレウはそのつもりだが、ワルジャークからこの戦いを許されたと取れるこの連絡は、レウにとって朗報だった。
「来いよケンヤ。目一杯相手をしてやる。風帝には世界を消させない」
「レウ…あんたらは…風帝を…誤解してる!」
「ケンヤ、それは自己正当化に過ぎないね。嫌ならかかってこいよ、ほら、来な!」
「くそっ…今度こそ…っ!」
ケンヤとレウの戦いは、続いた。
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