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 ◆ ◆ ◆



 その頃、魔界宮では、風帝院フウラたち下界防衛公団と、魔界神(まかいしん)アークカイザーとの戦いに決着が着いていた。

「ジャクロス・・・了命(りょうめい)したか・・・」
 アークカイザーが溜息(ためいき)をついた。

 フウラとの一戦を終え、魔界神アークカイザーはジャクロスの生死をゾルザムに尋ねたところだった。

「友よ・・・」

 ヴィリオンは、親友(ジャクロス)の「積年(せきねん)が弾(はじ)けたこと」を噛みしめた。
 友の闘いは、結実したのだ。

 ヴィリオンは、親友・ジャクロスを下界(ドカニアルド)に送り出した日に贈った言葉を反芻(はんすう)していた。

 ジャクロスはきっと「放たれるべきは鳥(カミイ)だ」と、鳥飼(ふうて)いに言えたことだろう。

「・・・泣こうよの」
 とアークカイザーが言うと、

「・・・察する・・・!」
 と、アークカイザーの足下で敗れ倒れたフウラが言った。

 すでにフウラの三人の仲間は敗れ、消えていた。
 アークカイザーは風帝院フウラを労った。

「誇るがよいわフウラ。お前はこの神をかつて倒し、今回はそれ以上の力を持って戦い抜き、風帝への道をつないだのだ。
 褒美(ほうび)だ。最後に一言だけ、言いたいことを言わせてやろう。
 たまわれ」

 フウラは床に倒れて天を仰いだままニヤリと笑い、こう言った。

「せっかくあんたも死にかけてるんだから早く行けよ・・・。
 HPが回復したら、五聖帝に封印してもらえなくなるぞ」

 アークカイザーは、「たわけめ・・・」と、声を枯らせた。


 ドン・・・。


 魔界宮の暗黒の空に、魔界神(アークカイザー)の攻撃音が響き渡った。

 ネオガーザムがアークカイザーに跪(ひざまず)いた。

「風帝院フウランザー討伐、お祝い申し上げます魔界神(アークカイザー)様」

 アークカイザーは
「肉体だけを殺した。どうせまた霊魂を天界神(リードセイガー)に拾われるだろう。
 神と戦える希有な奴めよ。だが・・・死は死よのう」
 と言った後、召し使いに声をかけた。

「ロッテンザーマス。ルーイの森にピラミッドを建て、今日の死者を手厚く葬り朕を讃えよ」
「かしこまりましてざます」

 ロッテンザーマスと呼ばれた女性の召し使いがかしこまった。

 アークカイザーは手元のメモ用紙にサラサラと、なにやら筆記してテーブルに置き、
「下界(ドカニアルド)へ行くぞ。ネオガーザム、ヴィリオン、ゾルザム、ヒシャマル」と言った。

「他の者は・・・」とヴィリオンが聞くと、魔界神(アークカイザー)はこう答えた。

「いらぬ。魔界(ヴィルパイアー)を守れ。朕が勝てば朕が、風帝が勝てばゼグマが、明日の魔界(ヴィルパイアー)を統べる」

 その同内容の言葉が、テーブルのメモには書かれていた。

 アークカイザーが言った。

「シャドーバハムートが十二万年の旅を終えた今、ブルーファルコンも、朕と十二万年の決着をつけるべきなのだ・・・」

 それを見ていたヒシャマルには、そう言う魔界神(まかいしん)の瞳が、なにか遠くを見つめているようにも思えた。

 ゾルザムは、普段のようには「さあさあさあ!」と元気になれない気分だった。

 彼はジャクロスが死んだことに衝撃を受け、膝を落とし、目が見開き、涙が出て、嗚咽まで出そうになるのをギリギリで堪えていた。

 それは自分自身でも全く信じられないことだった。

 なぜだろう。
 あれだけ嫌いだったジャクロスが死んだというのに。

 彼は、魔界宮のトップには魔界神(アークカイザー)だけがいれば良いと思っていた。
 神がいるというのにデスマスターなどという王権はいらないし、神たるものが、悪魔ごときに執心してほしくはなかった。

 しかし、ジャクロスに執心していたのは自分自身もだったのだ。

 アークカイザーは、ジャクロスのために下界(ドカニアルド)にまで行くという。
 ゾルザムは、明日からの王(デスマスター)は認めてやれそうだな、と思った。
 もはやジャクロスは、死んだのだから。

 ジャクロスの墓前に詫びたい、と思った。心境が変わった。
 そして、元気を出そうと思った。

 ゾルザムは叫んだ。


「さあさあさあ、行きますか!」


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