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#8 騎皇帝ドルリラ王


兵たちは、騎皇帝ドルリラをとりかこんで硬直しつつも、いよいよ我々が…!と覚悟した。

そのとき。
「…領主ディルガインよ!!!」
ドルリラ王が叫んだ。

「もしもルンドラが国ならば、貴公も王だろう!貴公は一体何をしているのだ!」

「ははは…わからんか? ドルリラ王…。ルンドラ独立のため、足かせを外しているところだ!」

「話をきこうではないか…貴公か…ワルジャークか…ルンドラの民か…? 誰でも出せ!」

「はん!! 聞く耳は持たんと言っているッッ!!」

「わしや、聖騎士や、ロンドロンド王宮を滅ぼすことが、ルンドラの民に役立つとでも?」

「そうだ! 聖騎士も王宮も世界を滅ぼす!! いや…世界どころかこの次元を滅ぼす引きがねとなりうるのだ!! ドルリラ様!」

「なぜだディルガイン! 守っているのだぞ!」

「…聞く耳は持たんというに…。はん…。守っているか。でもブルーネイル王国の同盟国だろう…?
歴代蒼い風を支援していただろう!?」

「ブルーネイル!? 蒼い風…? どちらも…今は存在しないではないか!」
思わぬ名前が出て、ドルリラは面食らった。

「な…なぜだディルガイン!! 聖騎団も蒼い風も、下界を守るため戦ってきたのだ。
世界を滅ぼすのは、貴様ら魔王たちのほうではないか!!」

「…違う! やはり、一から教育する必要がある。…すべての国民をな…。
そして、そのような考えを王や議会がもっていては、民が間違う!
そして滅びるのだ!! この次元が!!」

「なぜ滅びる!」

「…風帝を生むからだ…!」

「!」

「風帝の力は全次元で最大の罪…
あってはならんのだ!
それなのに、下界の多くの国々では風帝を、蒼い風を勇者と称え、間違った教育を押し付けている…。
しかしルンドラは違うぞ!」

「何を言っているのだディルガイン! この下界は、風帝が守ってきたから存在しているのだぞ…!」

「そして風帝のために滅びる…。そうあってはならないのだよ、ドルリラ様…。
だから我々が下界を征服する。心痛むが…今の体制は滅ぼさせてもらう。
ワルジャーク様が、下界を、再建するのだ!
そのための犠牲者は、葬式で心から追悼させてもらうぞ。
犠牲は必要なのだ…、だから…心から追悼する…」

「魔王めッ…!
魔王に征服されるものかっ!!!
蒼い風のリーダーたち…ジン=リュウオウザンも、ゼファー=リュウオウザンも、素晴らしい男たちだった…。
…蒼い風は、誇り高き正義の戦隊だった。
もし今、蒼い風が存在していれば、貴様は許されんだろう。
いや…蒼い風への侮辱はこのわしが許さん!」

ドルリラ王は戟(げき)をとった。

「お互い下界(ドカニアルド)を思うからこそ、の気持ちなのだ…。
わかってはいるが…ドルリラ様。お許しを…。
…などと今さら言えたものではないな……。
ははははは…死んで頂く!!!!」
ディルガインが答えた。

さあっ。

そのとき。
一陣の風が吹いた。

カゼカゼカゼ…

「なんだ…? この風は…」

声。

「……王様…。
ありがとう。
父さんやじいちゃんのこと、よく言ってくれて」

ざっ…。

そこに、少年が立っていた。

胸には…そう。ドルリラ王がかつて、共に杯を交わした男たちの胸に輝いていたものと同じ紋章。

黒獅将ディルガインは、思わず声を荒げていた。

「…ブルーファルコンッッ!!」

その傍らに拳士と術士。

「蒼い風の生き残りかッ!!!」

「君は…ひょっとして…ジンの息子の…?!」

「ケンヤ=リュウオウザン…!」

「ケンヤ=リュウオウザンだと…!?」

「ケンヤ=リュウオウザンか…!」

ケンヤ=リュウオウザン……、見参!!

ジージがあわてて報告する。

「国王陛下には、まだ申し上げておりませんでした…。
さきほど王宮に来られました。『蒼いそよ風』の3人でございます」


子供ではないか…。
ドルリラは正直に、そう思った。


《つづく》
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