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 ピピーッ!

 「ザィアーQ」の操縦席の隣のオペレーター席に通信が入った。

 ぴいぴいぴい!
 続いて、小鳥のぴちくりぴーが鳴いて知らせた。

 オペレーター席でふたりの女性がいねむりをしていたが、そのうちのひとり・レルリラ王妃が慌てて飛び起きて、みんなを呼んだ。

「み、みなさん、ヴァルティスV(ファイブ)の方々が呼んでますわっ! メイせんぱいも起きて下さいっ!」

「むにゃむにゃ・・・・・く・・・くるぶしが・・・・・・むにゃむにゃ・・・」

「んもうメイせんぱい、何ですかっ? その超エロい寝言はっ!」

 レルリラ王妃はウイングラード王室の公務として「蒼い風」視察中ということになっているが、実際は戦力として「蒼い風」メンバーに加わっている。蒼い風と王宮を行ったり来たりして忙しい。

 先代王は、子や孫が王宮から離れるたびに、「王と王妃と王子を王宮に連れ戻してこい」とアッカ隊長以下・聖騎団に命じている。
 だが、クラーク達が「蒼い風」にいたほうが世界平和に役立つのである。だからアッカはそのたびに、「探してるけど見つからない」と報告している。

 メイは、セシルの中学生時代の先輩である。

 セシルが「メイせんぱい」と呼ぶので、幼なじみのクラーク以外の「蒼い風」メンバーは、みんながセシルの真似をして彼女のことを「メイせんぱい」と呼んでいる。
 そんなメイせんぱいは、今は大所帯の「蒼い風」の専属調理士として・・・・・・いねむりをしている。

 わらわらと、大人たちと子供たちが集まってきた。
「おーん? なんだ?」
 と、ケンヤ達が通信元の「ドゥークデモアーのエメラルド」と呼ばれる水晶玉をのぞき込むと、肩に、うにゅを乗せたヴァルの姿があった。

 ヴァルの後ろでは再集結した配下たち、ヴァル四天王が、唐揚げ弁当を食べながら「ファイターカードゲーム」をして騒いでいる姿が見える。

 かつてのヴァルティスV(ファイブ)は悪事を行うための組織だったが、再集結した彼らは、悪事を討つための組織になった。

 ヴァルは自身の飛空挺「フンジヴァル」を操作しながら連絡事項を伝達した。

「いまギシュア上空にいる。さっきエヒミ達、下界巡察使(げかいじゅんさつし)の連中から入ってきた情報だ。
 大魔王エクスジード率いる冥頂大魔王連隊が、イタルサ帝国にある『ピザの斜塔』に攻め込み、たまたま居合わせた冒険者たち・レア=リティ隊と交戦中らしいので、救援に向かっている。
 あと部下のミララが『おわったらおしるこパーチーするのだー』だそうだ。では、現地で」

 プチン。通信が終了した。

「冥頂大魔王連隊? なんだそりゃ!」
 アルシャーナがひそひそ声で、声をひっくり返した。

「下駄文字(ゲタモンジ)。あのホッケー仮面は貴公の配下ではなかったのか?」
 クラーク王は、しゃがんで、ちびジョーに軽くデコピンして膨れた。

「痛(いって)えな! 今度やったら黒子(ホクロ)切り取って食うぞすっとこ騎士(ナイト)! 
 ・・・知ってんだろ? あのお面野郎、おととい契約満了になりやがったんだ。・・・さっそく世界征服するとか馬鹿言ってたな」

 ジョーは指に丁寧にとんがりコーンをはめながら、溜息をついた。

 あれから六年の間に、想像を絶するような数々の出来事が次から次へと起こったため、ジョーも、エクスジードへの一万回の命令を使い切ってしまったのだ。

「しゃあない魔王やなあまったく・・・!!」
 ガンマはアルシャーナと操縦を交代しながらポーション飲み飲み愚痴ったが、その表情はなんだか嬉しそうである。

「イタルサの人達が心配だよ。ヴァル達やレアちゃん達のほうは強いから心配ないけど・・・いそご!」
 セシルは真剣なまなざしで言った。犠牲者を出したくないのだ。

 よしきたとケンヤが、息子と娘に言った。
「よし、W(ダブル)リーダー、例のやつ・・・まかせた!」

「だってさ。ター。今日はどっちがブルーファルコン、する?」
 ファイが尋ねると、ターの肩で、ふにゅがにゅうにゅう、と言った。

 ターはにっこり笑って、答えた。

「今日はファイがやっていいよ」

「おっけー★」

 ファイが、ガルシャとキョウとクルリラの目を見て合図すると、その三帝はファイとターのところに駆け寄ってきた。

 ふたりの風帝は五聖帝エンジンの起動装置の宝玉に手を掛けた。

「お前ら、魔王は怖くないか?」

 ケンヤは、質問してみた。

 この子たちと同じくらいの頃、水車小屋に逃げ込んでいたっけ。

「こわいよね、ファイ」
「うん、こわいよね、ター」

 それから双子は、声を揃えて、言った。
「「でも・・・おしえてもらったからだいじょうぶ」」

 続いて、双子に加えて三帝も声を重ね、五人が声を揃えた。

「「「「「弱さは、ちからだってこと」」」」」

「ブルーファルコン始動!!」

 ファイの後頭部に、リボンのようにブルーファルコンが灯った。

「ザィアー五聖帝エンジン、ワールウインドブースト、オン!!」
 そしてターが、新たなる旅立ちを告げた。

 シュイイイイィィィ・・・・ン

 蒼い飛空挺が、前方に蒼く巨大なブルーファルコンの翼をまとった。

 これを受けて、後方の「ザィアーQ」自身の翼の輝きも、勢いを増してゆく。

 加速してゆく。



 ファイ、ター、ガルシャ、キョウ、クルリラ。
 五人の子供たちが、声を揃えた。



「蒼い風ファイター隊・・・、出陣!!」



 蒼い風が、行く。





 彼方へ。



 彼方へと。


















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【2度おいしい解説&薀蓄のコーナー】2回目に読むとき用の解説です。マウスで反転!→   ●アッカ隊長…死んでなかったんですね。
4話のクラークの回想シーンでは、アッカ隊長がマーキュルに敗れるシーンがあります。
死んだとも解釈可能なシーンではありますが、彼も死亡する前にエネルギー化され、幾億の生とともに球体のなかにいました。
こういう人はエネルギーも多いので、魔界神復活に役立てられたのですね。

新生五聖帝…新生五聖帝の旅立ちです。
「ブルーファルコンはひとりに宿る」という設定がありました。しかし今回風帝はふたりいます。つまりカミイがあっち行ったりこっち行ったりしているわけです。ふたり同時にブルーファルコンを発動させることは出来ません。もちろん、こんな風帝は今までいませんでした。
ファイとターは5歳で蒼い風6代目リーダーに就きました。むかしの蒼い風の3代目リーダーのリシュアという人は6歳でリーダーになっているのですが、それより幼く就任していることになります。
ケンヤも3歳のころから前線で戦わされていました。大変なところやでえ。鬼やでえ。
準五聖帝となった5人は、本人たちの希望と下界防衛上の理由により、元服前にすでに称号が与えられています。四字熟語の布を5人ともつけてます。これはキョウがジョーに作ってもらったら「ぼくも作ってー」「王子もー」ってことになり、みんな作ってもらったのでした。子供は友達をうらやむものなんですね。

というわけで5人の設定をお披露目ー。配色も決定済みです。

◆ファイ=リュウオウザン 波風戦士(パフファイター)。風帝ときどき波帝。双子の姉。布の四字熟語は、風光明媚ならぬ「風帝明媚」。

◆ター=リュウオウザン 風波剣士(カザナミフェンサー)。波帝ときどき風帝。双子の弟。オリオンの聖剣士として生まれてきた。オリオンは聖剣士が死んでから次の人に宿ることが比較的多いが、ターのようなケースも時々ある。布の四字熟語は、誠心誠意ならぬ「聖剣星威」。

◆ガルシャ=ジーオリオン 閃雷拳士(センライクンファー)。雷帝。雷の魔動拳法で戦う少年。脚技が得意。邪雷王の力も受け継いでいる。弟や妹がいっぱいいるので大変なお兄ちゃん。布の四字熟語は、千客万来ならぬ「閃脚万雷」。

◆キョウ=イチモンジ 光龍幻士(ヒカルマグス)。光帝。龍人の孤児。「龍人」と「龍」と「人」の3種類に姿を変えられるが、「龍人」が本来の姿。「幻法」で戦う。日焼け跡あり。
龍をかぶっているように見えるが、素で、こういう子。下駄はいてる。布の四字熟語は、有言実行ならぬ「龍幻十光」。

◆クルリラ=ファル=ウイングラード 輪炎銃士(ワレンガンナー)。炎帝。
寵愛されてわがままでアホで突然意味の分からない言動をする困った王子様。パルプンテ的な存在なので戦力としては当てにならないが、時々大当たりする。
マントの穴から様々な銃火器を出して乱射する危ない人。迎えに来てほしいときは、王子様なので白馬に乗って迎えに来てくれる。でもなんか意味が違うと思う。むかし大学の先輩が「ファイターRPG」で作ってくれた名キャラクターをアレンジしました。布の四字熟語は、縦横無尽ならぬ「銃弾無尽」。