CHAPTER 15 -RAINNING IX-
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 ドン!

 この雨天に、名乗りが衝撃音を劈(つんざ)いた。
 そして、ともに全開の能力が、解き放たれる時。







「ブルーファルコン、始動!!!」
「シャドーバハムート、始動!!!」







 ダッ!

 互いに向かって走る。
 ふたりの戦いの、開陣(はじまり)である。


 ザアアアアアアアアアアアアアア・・・



 見守る四帝と邪士帝達。

 空に浮かぶ幾億の生。

 水しぶき。

 咆吼。

 雨霧風。

 様々な思いが、力性が、音が飛び交う。




 打撃音。

 斬撃音。

 波撃音。

 蹴撃音。

 衝撃音。



 ケンヤが、ジャクロスと、戦っている。

 お互いを確認するように、慈(いつく)しむように、戦っている。


 激突は、いつまでも続いている。


 撃ち合い、斬り合い、つばぜり合い、

 蹴り合い、締め合い、殴り合い、

 押し合い、投げ合い、ひっぱり合い、

 埋め合い、言い合い、潰し合い、

 刺し合い、受け合い、当たり合い、

 組み合い、縛り合い、落とし合い、

 鯖折り合い、叩き合い、叫び合い、

 果たし合っている。



 風帝は、ときには空を舞っている。

 風になっている。

 風となり高き所に在ってなお、戦士であることを維持している。



 ジャクロスはいくつもの技を繰り出し、あるいは受け、自らの真の誕生を、自らの「闘(たたかい)」で、祝福している。



 風と闇。

 宿敵たちは濡れ合って戦い、互いの宿敵を歓迎した。



 雨。雨。雨。


 ゼスタインの雨。







 ザアアアアアアアアアアアアアア・・・









 今ここに

 蒼き隼(はやぶさ)の

 黒き龍(たつ)の

 ともに舞うを

 ともに放つを

 ともに血

 飛沫(しぶ)くを見たり

 雨よ

 雨よ

 ゼスタインの雨よ









 今ここに

 ゼスタインの

 希望の城の

 ここに時(れきし)の

 ここに記すを

 ここに涙

 飛沫くを見たり

 雨よ

 雨よ

 ゼスタインの雨よ









 ジャクロスは無意識に「見せよ!」と叫んでいたのだと思う。

 それに応じた、風帝の最後の一撃が放たれていた。
 ケンヤが、ブルーファルコンを放っていた。



「ブルーファルコン・・・ 離脱・・・!」










――ゼスタインに

飛ぶ

雨に

飛ぶ

蒼き一羽――









 光輝き薄く蒼く。ブルーファルコンが飛んでくる。




 命と使命の隼が

 風を、風を、風を、

 風を吹かせている。




 ジャクロスは、自らに迫り来る風を見た。
 十二万年前、あの風に、「愛している」と言ったことがある。
 あの時は行ってしまったが、やっと自らの胸に飛び込んできてくれるのだ。
「フッ・・・」

 裁かれるのだ。

 ジャクロスは微笑み、


「見たり!!」


 と叫び、胸から、その身を裂かれた。










今ここに

壱万弐万参万の

肆万伍万陸万の

漆万捌万の

玖万拾万の

時の拾壱万の

時の拾弐万の

時の雨

満つるを見たり

雨よ

雨よ

ゼスタインの雨よ









 ジャクロスの身を、ブルーファルコンが貫いた。


 そして、雨は、上がった。


 昼前からゼスタインの上空でぐずつきだした雨雲は
 ジャクロスがその姿を取り戻すと同時に一度に驟雨(しゅうう)となり、
 その雨は、ジャクロスの身体を隼が貫くと同時に、
 止んだのであった。


 空高き場所で、ケンヤとジャクロスは、了陣を迎えていた。


 スローモーションのように貫かれてゆくジャクロス。


 “先に自由になれるんだよ・・・ジャクロス・・・”


 ジャクロスに、カミイの声が聞こえた。

 そして、頭上に「輪」が降りてきた。

 死の証である。十二万年夢見た、「輪」の獲得である。


 求めていた・・・。

 本当の肉体の、本当の死・・・。


「ありが・・・とう・・・」

 ジャクロスが言った。

 その言葉はもうジャクロスには、自分の霊体が言ったのか肉体が言ったのかもわからなかった。


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